きみだけに、この歌を歌うよ





「って、九条くーん⁉なにやってるのっ?」



開け放たれた窓の枠に手をついて、軽々と飛びこえた九条くんは、すでに音楽室の中にいた。



「ちょっと見るだけだよ」

「バレたら先生に怒られちゃうからダメだよぉ!」



ふり返りもしない九条くんは、40席ほどある机の間をぬってずんずん奥へ進んでいってる。



「すぐ出るって」

「んもーっ!ほんとにちょっとだけにしてよ?」

「やっぱいいなー、グランドピアノ。俺の部屋にもほしいけどさすがにデカすぎなんだよな」

「って、私のはなし聞いてますかぁーっ?」

「何か聴きたい曲ある?」