追憶のディアブロ【短篇】




「あ……」

 自分が手にしているモノの存在を瞬時に思い出した。

 そう、あの瞬間。私が持っていた銃の引き金は衝撃と同時にひかれたのだ。

 狙っていた左胸ではないが、確実にディアブロの体を撃ちぬいた。

「……う……」

 苦しげな吐息と共に、ディアブロは私が握ったままの銀の拳銃に手を伸ばす。

 ディアブロの銃は飛ばされたのだろうか、その手にない。

 砂利を踏みしめる音はゆっくりと、もう間近に迫ってきていた。

 その音が二、三メートル離れた位置まできてピタリと止まり

「君の考えることなんて、僕には全て分かるに決まってるだろうディアブロ……だって君は……」

 頭上から聞こえる声。

 だが、それが聞こえた瞬間。

 ディアブロはとても撃たれて重症を負った人間とは思えないスピードで私の銃を奪い取り、振り向き様にその引き金を引いた。

「……っ」

 開けた視界の中で、声を途切れさせてゆっくりと倒れていく男。

 雨のように降り注ぐ冷たい水しぶきの中、仰向けに……

 そして男が倒れると同時に、私の目の前でゴーストを撃った男も力尽きたように再び地に転がった。

「……とどめを……刺せ」

 片手で腹を押さえて苦しげに喘ぎながら、ディアブロはそう言って、銃を私に差し出した。

 私がそれを受け取ると、何故か満足げな笑みを浮かべ

「仇をうて……今度はちゃんとここを撃ちぬけよ」

 銃を手放したその手の親指で、自らの左胸を指した。