追憶のディアブロ【短篇】



 ディアブロがゴーストに気を捕らわれすぎて、背後への注意を忘れたように。

 私もディアブロに気持ちを集中させすぎて、気が付かなかったのだ。





 渡り廊下に現れた男がすぐに足を止め、ゆっくりとこちらを振り向き。
 
 その口の端が薄らと上がったことに――



 
「ジーン!! 伏せろ!!」

 


 まさに、ディアブロに向けた銃の引き金をひこうとした瞬間だった。

 ディアブロの体が私に覆い被さると同時に激しい爆音と、爆風が襲う。

 盾としていた噴水は破壊され、その砕けた破片が爆風に飛ばされるディアブロと私を打った。

「ぐっ……」

 地面に叩きつけられて、その衝撃に思わず声が漏れる。

 ゴーストは気付いていた。

 私たちがここにいることに……

 迷わず投げられた小型爆弾で破壊された噴水の中心。外装が剥がれねじれた水道管についた無数の傷から、四方八方に水しぶきが噴出し、地面に転がる私たち二人にも降り注ぐ。

 中庭の砂利を踏みしめてくる音が聞こえるが、私を覆うディアブロの体に視界を遮られ姿を見ることはかなわない。

「ディアブロ……どいて。あいつが来る」

 のしかかるディアブロの体をどかそうと、腕を突っ張り、気が付いた。

 ディアブロの腹部に広がる染み。

 白いシャツを赤く染める……