(今なら……撃てる)
目の前にある大きな背中。肩にかかる灰色の髪を見ながら私は自らの手にある銀色の銃を握り締めた。
七年間使い込まれたそれは、今ではもう体の一部と言っても過言ではないほどに私の手になじむ。
くれたのは目の前で私に背を向ける男。
男の名前はディアブロ。
とはいっても本名ではない。
国を二分する勢力を持つ大きな裏組織の一つセルゲイ一家ナンバーワンのヒットマン、それが男の正体……ディアブロという名はコードネームだ。
私の母親を殺した男は、私を側に置き、私に銃の扱いを教えた。
七年という年月を経て、幼かった私ももう十五の歳を迎え、セルゲイ一家のヒットマンの一人としてディアブロに次ぐ実力を認められ、一家の主であるセルゲイにも可愛がられている。
そのセルゲイの屋敷は今、敵対するもう一つの組織により襲撃を受けていた。
裏の物流ルートを巡っての抗争。それが悪化し、敵組織は凄腕の殺し屋を雇ってここを襲撃させた。
たったひとりの男の手で、屋敷を守っていたセルゲイの部下の多くがやられ、唯一の救いは主であるセルゲイが急用で留守にしていたこと。
だが、セルゲイが戻るまでにカタをつけねばならない。彼を失えば組織は崩壊する。
そんな状況下でディアブロと私は今、屋敷の中庭の噴水の影に身を潜め、近づいてくる銃声に備え身構えていた。