「俺が憎いか?」
冷たい雨が頬を濡らす感触に目を開けた私を待っていたのは。
先ほどまでの冴えた青空が嘘のように灰色に染まった景色と、空の灰色と同じ髪色をした男。
その顔を見た瞬間、意識を失う前の光景が鮮明に蘇り、恐怖で私は慌てて身を起こそうと地に手をついた。
瞬間、ぬるりとした感触が手の平に伝わり、その元凶を目にして
「……っ」
わたしは小さく喘いだ。
夢じゃなかった。夢じゃなかった。
悪夢であって欲しいと願っていたのに……
膝をついた私の目の前には、息絶えた私の母親。
冷たいアスファルトにうつ伏せに倒れた背中に赤く広がる染みと雨が、シャツをベタリとその体に貼りつかせて生々しい。
横たわる母親の死体をはさんで立つ男。
こいつが撃った。
その光景を目の当たりにして、ショックのあまり意識を失ったのだ。
それを思い出し、憎悪の気持ちを抑えきれず睨み上げた私に男は
「俺が憎いか? ならば強くなれ。強くなって……いつか母親の仇を取ればいい」
そう言って、銀色の拳銃を差し出した。
男を睨みつけたまま、誘われるように手を差し出す。
全てが混沌としていた。何が、何故こうなったのか、幼すぎた私には全てが理解できなくて。
怖くて、悲しくて、苦しくて、憎くて……
そんな感情だけに支配されて。
私が初めて銃を手にしたのは、まだ八歳の時だった――