彼の姿が見えなくなった。

自分で決めたことなのに、何故か心が空っぽになった気がした。





ブランコから離れ、彼が何か置いた場所へ向かう。


















「ばかだな、私…」




それは冷たくなったカフェオレ。
カコン、とプルタブを開け、一口飲む。
すごく甘くて優しい。
でも私にはちょうどよい甘さだった。







甘党の私に珈琲が好きな彼はいつか無糖のものを私に差出した。
せっかくの行為を無駄に出来なくてちびっと一口飲んだが、やはり私には無縁の味。
必死で笑ったつもりだったけど、とんでもない事をしでかしてしまったと彼は何度も謝って。



微笑ましい記憶とほんの少し残る熱が私の涙をさらっていく。



ねえ。
あなたはとっても不器用な人だったね。
だけどふとした優しさが私を溺れさすの。











――――――高一の冬。