「橘くんってキスとかするのかな?」


「ぶっ!」


昼休み中の中庭で、
自販機で買ったコーヒー牛乳を吹く、
親友の葵(あおい)ちゃん。


「突然何言ってんの?!」


「えっ、なんか急に気になって。
ほら、橘くんって、女の子と喋ってるとこ見たことないし。」



私、月島 梨衣子(つきしま りいこ)。

高1。


天然だね、とよく言われますが
どこが天然なのか分からない。

ていうか天然じゃありません。

ごく普通の女の子です。



「…そりゃ確かにそうだけどさぁ…
急にそういうこと言わないでよ。」



「すみません。」



「でも、どーなんだろーね。
橘って顔いいし
勉強できるし
運動できるから

女子に一方的に
話しかけられてるところは
見たことあるけど、

まともに返してるとこは
見たことないなぁ。」




「でしょー?」



橘くんは、正直言って、
学年1、いや学校1のモテ男だと思う。



私も顔は整ってると思うし、
テストでも絶対学年1位だし、
運動もできてすごいなって思う。


なのに、女の子と一切喋らない。

男の子の友達は多いみたいだけど。



「だから気になったんだよね。」


「…一応聞くけど、
橘を好きとかじゃないよね?」


「うん、それはないかな。」



「即答すぎ(笑)」



うん、別に好きとかじゃないかな。

ただ、どんな風に
キスするのか気になっただけ。


それって、女子の誰もが気になるところじゃない??


そういう人が、


どんな風に人を好きになって、
どんな風にキスして、
どんな風に人を愛するのか。