「お前は“本当の自分はこういう人間だ”って、きちんと声にして伝えたことがあるのか?」
「そ、それはっ……」
「察してくれって?そんなの無茶だろ。その正解は、お前しか知らないんだから」
会長のその言葉が容赦なく胸に刺さる。
まさに、その通りだからだ。
私は誰かに自分を分かってもうことを諦めて、そのくせ“誰も分かってくれない”って拗ねてる。
まるでだだをこねてる子供みたい。
「みんな、本当のお前を見てないんじゃない。知らないんだ。自分のことを知ってもらいたいなら、まずありのままのお前でぶつかれ。それでもお前の家柄や見た目にこだわるヤツがいたら、それは分かってもらう必要のないヤツだ」
ぶつかるのが怖かったんだ。
本当の自分を知って欲しいって思ってるのに、その自分すら“受け止めてもらえなかったらどうしよう”って。
一人ぼっちだって、知るのが怖かった……。
「安心しろ。少なくとも、俺はこうしてお前の側にいる」
「会長……」
「だろ?」と言って会長は、私の頭に手を置いて優しく微笑んだ。
熱いものが込み上げてきて、キュッと唇を結ぶ。
会長は不思議だ。
会長の言葉は、こんなにも簡単に私の心を軽くしてしまう。
会長が優しく頭を撫でると、不思議と肩の力が抜けていく。
会長が優しく微笑むと、大丈夫だって思えてくる。



