キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜


「みんな……。何度も言ってるけど、出迎えとかいらないから、自分達の仕事に戻って?」


「はい。失礼致します」と言ってまた深々と頭を下げ、無駄のない動きでそれぞれの持ち場に戻る彼女達にはぁっと溜息が零れてくる。


ありゃ絶対明日も出迎えてくるだろうな……。



「お嬢様困ります。あれも彼女達の仕事なのですから」


「滝本」


「お帰りなさいませ。お嬢様」



ピッチリと整えられた髪型に、爽やかな顔立ち。


ビシッと決めた黒スーツの上にフリルの付いた可愛らしいエプロンをつけて、濡れた手を拭いながら玄関へと出てきたのは───滝本誠司【たきもとせいじ】18歳。


滝本はお父さんが私に付けた、私の身の回りの世話をする世話役ってやつだ。



「また何その格好……。エプロン似合わなすぎでしょ」


「今日は昨日から仕込んでおいたクッキーを、お嬢様のおやつにと焼いておりました」



ニッコリとすました笑顔を見せる滝本に呆れながらも、あぁ。道理でバターのいい香り。とちょっとばかり胸が躍る。


さすが滝本。私の好きな物をよく分かってる。



滝本は、滝本のお母さんがうちのお手伝いさんとして働いていることもあって、昔からよくうちの屋敷に遊びに来ていた。