もう、“名門西園寺家の一人娘”としての品格なんて微塵もない自分に満足してたのに、今度は『西園寺家の一人娘なのに』だ。
『西園寺家の一人娘なのにあんな格好をして!』
『西園寺家の一人娘として失格よね!』
結局、私は西園寺家という肩書きから逃がれることはできないんだ。
そうやって、見た目や家柄でしか人を見れない人達が、私は大っ嫌いだった。
だから、そんな人達に何を言われようが、今の自分を貫き通したし、動じないでいようって決めた。
だけど、私だってそんなに強くないよ……。
みんな私のことを好き放題言うけどさ、私の何を知ってるの?
私と話したことある?
私の声を聞いてくれたことある?
みんな勝手だよ。
なんだか……もう何もかもが面倒くさくなってきた。
どうせ誰にも理解されないなら、一人の方がずっといい。
「────い。おい!聞いてるのか?」
「え?」
「え?じゃない。何ぼうっとしてるんだ。全く勉強の手が進んでないぞ」
ぼうっとプリントに落としていた視線を上げると、隣で怪訝な表情を浮かべる会長の姿が飛び込んできてハッと我に返る。



