紙が擦れて、指先に切り傷ができていた。
そこから血が滲み始める。
それを見ていたら、なんだか無性に泣きたくなった。
……やっぱり、結局は誰も本当の私なんて見てくれない。
*
校則違反だとわかっていながら髪を染めたのは、入学して一ヶ月くらいたった頃。
理由は、私の意思なんか関係なしに、無理矢理この学園に入学させたお父さんへの当てつけ。
それと、もう一つ。
西園寺家という檻の中から逃げるため。
どこに行ってもついてくる、“名門西園寺家の一人娘”という肩書きに、囚われたくなかったから。
『さすが、西園寺家のお嬢さん!』
『賢そうだし、清楚で可憐で、西園寺家にピッタリのお嬢さんだわ!』
昔はよくそう言われたけど、ちっとも嬉しくなんてなかった。
私の名前はいつも西園寺家とセット。
みんなが見てるのは私じゃない。
西園寺家だ。
誰も本当の私なんて見てくれない。
そう思いながらも、イメージ通りのお嬢様を演じてた。
だけど、納得のいかない高校への入学を期に、今までの不満が全て爆発してしまった。
髪は染め、スカートは短くした。
制服は着崩し、メイクだってした。



