キミに拾われ、恋して、知って。〜鬼生徒会長と同居はじめます〜


紙が擦れて、指先に切り傷ができていた。


そこから血が滲み始める。


それを見ていたら、なんだか無性に泣きたくなった。



……やっぱり、結局は誰も本当の私なんて見てくれない。













校則違反だとわかっていながら髪を染めたのは、入学して一ヶ月くらいたった頃。


理由は、私の意思なんか関係なしに、無理矢理この学園に入学させたお父さんへの当てつけ。


それと、もう一つ。


西園寺家という檻の中から逃げるため。


どこに行ってもついてくる、“名門西園寺家の一人娘”という肩書きに、囚われたくなかったから。



『さすが、西園寺家のお嬢さん!』


『賢そうだし、清楚で可憐で、西園寺家にピッタリのお嬢さんだわ!』



昔はよくそう言われたけど、ちっとも嬉しくなんてなかった。


私の名前はいつも西園寺家とセット。


みんなが見てるのは私じゃない。


西園寺家だ。


誰も本当の私なんて見てくれない。


そう思いながらも、イメージ通りのお嬢様を演じてた。


だけど、納得のいかない高校への入学を期に、今までの不満が全て爆発してしまった。


髪は染め、スカートは短くした。


制服は着崩し、メイクだってした。