私はこんなに前向きに自分の立場を考えることなんてできない。
きっとこの人は、私と違って自信があるんだ。
だって、アンタは完璧だもんね。
会長の言うことは、確かに的確で正しい。
欠点一つ見つからなくて、私ってコイツにくらべたら本当にどうしようもない人間だなって思えてくる。
まるで私、誰でもいいから自分自身を受け入れてもらいたくて、拗ねてるみたい。
無性に恥ずかしくなって、俯きかけた時。
「そうやって自分がそっぽ向いてたら、見つかるもんも見つからないだろうな」
────グイッ!
両頬を挟まれ、俯きかけた顔を持ち上げられる。
「ちょっと何す……っ」
うわっ……。
会長の顔、近いっ……。
じっと見つめられ、不覚にも心臓が高鳴り出す。
まつ毛長……。
あ……髪は黒いのに、意外と目の色素は薄いんだ。
ほんと完璧。
そう思っていたら、今までぶれることのなかった会長の瞳が揺れて、一瞬動揺の色が浮かんだ。
ん?
「……これ……」
はい?
これ?
「首、引っかき傷できてるな」
「え?あ、本当だ。血出てる。さっき取っ組み合いしたからかな?」