「か、会長ほっぺが……」
う……うわぁ…。痛そう……。
ハラハラと二人を交互に見ていれば。
「気が済んだか?」
会長は目にかかった髪の間から冷たい眼差しを彼女に向ける。
「っ……さようなら!」
彼女は悔しそうに唇を噛んで、大きな足音を立てながら玄関を出て行ってしまった。
こ……これが世にいう修羅場というやつですか……。
っていうか!
「い、いつまでこうしてんのよっ!!」
私の肩に回ったままの会長の手を振り払う。
顔が熱い。
振り払ったのに、まだ会長の体温が残ってる。
“こいつで手一杯”ってさっき会長は言ったけど、あれって私の手がかかるって意味の嫌味だよね?
それなのになんでだろ?
何でかちょっと嬉しかった……。
嫌味を言われて嬉しいとか、ほんと私どうかしてる。
熱くなった頬に手を当てて、必死に熱を逃がす。
「ってか、さっきの一体なんなのよ!元カノならこうなる前にもっとどうにか出来たでしょ!?とんだとばっちりにあったじゃない!」
「元カノじゃない」
「は?じゃあ、何なん……」
そう聞く前にハッとする。
こいつ……まさかっ……!



