そう思うのに────。
「おい。そこの問題児。止まれ」
出たなっ……!
学園の敷地内に入る一歩手前で足を止めると、校舎へと続く並木道の向こう側から歩いて来る人影が見えて、ちっと小さく舌打ちをする。
「またお前か問題児」
コイツが現れる時って、SF映画の悪の親玉みたいなBGMが聞こえてくるのは気のせいかな……。
「何度言わせれば分かるんだ」
「それはこっちのセリフ」
バチバチと火花を散らし、いつものごとく睨み合いが始まる。
相変わらず、気に食わないヤツ。
180はあるだろうスラッと伸びた高身長で、偉そうに上から私を見下ろしてくるこの男───五十嵐律樹【いがらしりつき】。
ヤツは、この学園の生徒会長だ。
それも、ただの生徒会長じゃない。
「髪色、化粧、制服の着崩し、スカート丈、靴下、全てにおいて校則違反だ。1分以内に全てを正せ」
「なっ…!この鬼っ!!そんなのできないの分かって言ってんでしょ!?本当性格悪いっ!!」
この男は、バカみたいに厳しい“鬼”生徒会長なのだ。