西園寺家の一人娘が家出したなんて知られたら、お父さんの面子が丸潰れだもんね。


『親からか?』


『そうみたいね』


『出ないのか?』


『はっ。何言ってんの?この人が嫌で家を飛び出して来たのよ?出るわけないじゃない』



そう言って、鳴り止まないコールを止めようとした時だ。



『貸せ』


『ちょっ……!』


『もしもし』



なっ…何であんたが私の電話に出てんのよーーーー!?!?



『ちょっと!返し……』



取り返そうと飛びつくもひらりとかわされ、会長は私のスマホを持ったまま公園の外へと出て行ってしまった。


ちょっと待ってよ……。


本当、何してくれてんの?


家出娘の電話に男が出たなんてなったら、西園寺家は大パニックだよ。


ただでさえ、お父さんは私の交際にまで厳しく目を光らせてる人だってのに。


こんなの、連れ戻されるに決まってる!




ほどなくすると電話を終えた会長が戻ってきた。



『終わったぞ』



“終わったぞ”じゃないっつの……。



ベンチに項垂れる私に、会長はスマホを差し出してくる。



『あんたって本当に最低ね……。私の居場所でも知らせてきたわけ?』



もう腹立つを通り越して笑えてくるよ。


何で今日に限って、コイツに会っちゃったんだろう。


つくづく神様って意地悪だ。



『わかったわよ。帰ればいいんでしょ』