私の中で会長の存在はこんなにも大きくなってるのに、会長の中で私は、その他大勢の女子と変わらない。


むしろ、会長とあーだこーだした人のが、私よりもずっと会長のこと知ってるよね?


間違いない。



私なんて、ただ一緒に暮らしてるってだけで、一緒に帰ったのも今日を入れて2回しかない。


家で顔を合わせても、まともに会話をするのは食事の時くらいだし。


私って全くもって会長のこと知らないじゃん。




会長から目をそらすと、電車の中に張られた広告が目に入ってきた。


今朝、池崎さんが話していた花火大会の広告だ。



そういえば、会長は花火大会に行くのかな?


誰かと約束してたりするのかな……?


会長のことだから、色んな女子に誘われてるのは間違いないけど……。



チラリと会長を見上げる。


すると、それに気付いた会長と目が合ってしまった。


げっ!



「何ださっきから」


「え!!あー…えと……。あのさ……会長さ……」



聞こうか聞くまいか……。



────ゴッ!



「いだっ!」


「聞こえない」



会長の額が私の額にくっついて、じっと見つめられる。



だから、いちいち近いんだってば!!!!!



「か、会長って……さ……花火大会とか、行く?」



平静だ。平静を装うんだ鈴。


こんなの何でもないように言えば、何でもないただの質問だ。