奥まで入ることが出来ず、私と会長はそのままドアの脇で密着したまま、電車が動き出す。


こ、この体勢は……どうなんだっ……。


ドアの脇のスペースにスッポリとハメられた私と会長との距離は、会長の胸に顔があたるくらい近くて。


しかも、会長の腕はまだ私に回ったまま。まるで、抱きしめられているみたいな体勢。


こんなの……駅まで心臓がもたないっ!!



「我慢しろよ?不可抗力だ」


「わ、わかってるし!」



とは言ったものの、まずい。


これ、会長に心臓の音聞こえちゃうかも。


も〜!私、何で会長なんかにこんなドキドキしてるのよ!!



こんな時でも、会長はサラリとした顔をしてるから無性に腹が立ってくる。



そうだった。


コイツはかつて、女遊びの経験があるんだった。


つまり、あーんなことやこーんなこともしてきた、恋愛上級者。


こんな風にちょっと女子と密着するくらい屁でもないんでしょうよ。


へー、そうですか。


ハイハイ、そうですよね。



なんだろ。


なんか、イライラする。




────ボスッ。




「いてっ。何だ急に」


「……なんとなく」



会長の胸の辺りをグーで軽くパンチ。


すると、会長は眉根を寄せて私を見下ろしてくる。



「お前はなんとなくで人を殴るのか。チンピラか」



「……。」



ふん。人の気も知らないでさ。


だって、何だか無性に腹が立つんだもん。