だけど、会長の言う通りだ。


気がつけば私は、すっかりこの生活が当たり前になっていた。


始めの頃は言われた食材を探すのすら難しくて、すごく時間がかかった買い物も今ではお手のものだし、スーパーで何を買っていいか分からず、間違って高級な食材を買って帰って会長に怒られることもなくなった。


洗濯物や掃除だって、会長に言われなくてもすすんでやっている自分がいるし、嫌だとか辛いだとかも思わなくなった。


会長との生活が、間違いなく私の中で“日常”になりつつある。


やだな……。


いつか終わりが来るんだってことはわかってるのに。


会長の存在が私の中でどんどん大きくなって、そばに居るのが当たり前になっていく。


それって、何だかちょっとだけ怖い。




ホームに着くと、私達が乗るつもりだった電車が丁度停車したところだった。



「わっわわっ!」



慌てて電車に駆け寄ると、扉が開き、中から出てきた乗客に押し流されそうになる。


やば!


ドアが閉まっちゃう!


ドアが閉まるアナウンスが流れて、いよいよ諦めかけていたら。



「何やってんだ」



会長に肩を抱かれ、流れに逆らいながら何とか乗車することができた。



「あ……ありがと」


「ん」




電車の中も人でギュウギュウだった。