お父さんの説教を右耳から左耳に聞き流して、何とかこの場をやり過ごそうと滝本のいれた紅茶を一口含んだ時だ。
「お前の母さんも、きっと天国で呆れているぞ」
お父さんのその言葉で心臓がドクンと嫌な音を立てた。
「ガッカリするだろうな。今のお前のその姿を見たら」
聞き流せ!聞き流すの!
そう心の中で唱えても、鼓動は加速していくばかり。
嫌なものがドロッと、腹の底から押し上がってきて……。
「アイツがお前に、西園寺家の一人娘としてどれほど期待していたか……」
────ガシャン!!
私は、勢いよくテーブルに手をついた。
テーブルの上のコーヒーカップが倒れて、テーブルクロスに染みを作る。
ついた手が小刻みに震えてる。
「お母さんは、お父さんとは違うっ……!」
一切顔色を変えず、私を見上げるお父さん。
そんなお父さんの姿が余計に私の怒りを煽ってくる。
「お母さんは、ちゃんと私自身を見てくれてた!西園寺家の一人娘としてじゃなく、一人の人間として幸せになってほしいっていつも言ってた!」
お母さんをまるでお父さんと同じ人間のように言わないでほしい。



