少なくなったカップの中身を注ぎに来た滝本をジロっと睨むと、滝本は「うっ」と声を漏らして気まずそうに視線をよそにやった。
「滝本を責めるんじゃない。私がお前には黙っておくよう言ったんだ。どうせ、私が帰ってきたことを知ったら、お前は部屋に籠るだろう?」
「……別に……」
あーはい。間違いなくそうですよ。
その通りですよ。
分かってるのなら、今すぐこの息苦しい空間から解放していただけませんかね。
せっかく滝本が焼いてくれたできたてクッキーの味が、この人と一緒だと台無しだ。
「ところで、お前はまだそんな頭で学園に通っているのか?」
……ほら。
来ましたよ。来ると思ってましたよ。
まるで汚い虫でも見るみたいに顔をしかめて、呆れた溜息を零すお父さん。
実の娘をよくそんな顔で見れたもんだと、苦笑が漏れる。
だけど、お父さんはそんな私の心情になんて気付くはずもなく、持っていたコーヒーカップをソーサーへと戻した。
「お前は西園寺家の一人娘という自覚が足りなすぎる」
あーぁ。また始まった。
「そんなに私の顔に泥を塗りたいのか。もっと品格ってものを持ちなさい」
聞き流せ聞き流せ。



