「あれが噂の西園寺さん?あの名門西園寺家の一人娘だっていう?」


「そうそう。なんでも、学園始まって以来の問題児って噂よ。前に彼女に脅されて泣いている子を見た人がいるって!」


「きゃー!こわーい!」


「うちの学校には不釣り合いよねー!」




────好きなように、言えばいい。




背中まで伸びた明るい髪をサラッと風になびかせて、最寄りのバス停から学校までの道程を足早に歩く。


その間にも、コソコソと耳打ちをしながら距離を取り、私を避けるように道の端に移動する同じ学校の生徒達。



毎朝毎朝、よく飽きもしないで人を珍獣扱いできるもんだ。


まぁ、こんなのもう慣れっこだけどね。



私が通う花ノ宮学園高等学校は、お嬢様やお坊っちゃんが通う、いわばセレブ校。


何でも、おばあちゃんのおばあちゃんが生まれた時代に創立された、数々の伝統がある由緒正しい学園らしい。


“らしい”って言うのは、あまりに興味がなさ過ぎて、よく知らないから。


ほぼ強制的に入学させれたこの高校に、そこまでの愛着は1ミリほども持ち合わせていないって話。