今日から、孫達と一緒に暮らすことになった。

 新しい家を建て、隣り町から引っ越してきた、崎宮ゆめ。

 何度も窓から顔を出し、孫達の車が到着するのをソワソワしながら待っていた。


 もう一度、チラリと窓から外を見ると、隣の家の庭からこちらを見ている視線と重なった。

 隣の家の住人か? 取りあえず頭を下げようと思ったが、その視線はどこかへ行ってしまった。


 すると、一台のトラックが家の前に止まり、その後ろに白い乗用車が止まった。


「南朋、翔!」

 ゆめは、叫びながら外へ飛び出した。


「お婆ちゃん!」

 二人の孫が、車から飛び降りると、ゆめに抱きついてきた。


「朝早くから疲れただろう? ジュースがあるで……」

 ゆめは、二人の手をとった。



「こら! 二人ともきちんとごあいさつしなさい」

 子供達の後ろから、大きな鞄を抱えておりてきたのは、息子の嫁の恵理さんだ。

 美人なのだが少々キツイとろがある。


 さっきまで、笑顔を見せておった姉の南朋の顔が少し雲ったのは気のせいだろうか?

  南朋は本当に優しくて可愛い…… 

 だが少々人見知りなのが気になる。


「こんにちは」

二人の孫がペコリと頭を下げた。


「恵理さんも、引っ越しが忙しいだろうから、この子達は離れで私が見ておるよ」


「すみません」

 恵理は、忙しそうに家の中へと入って行った。


 すると、ふっと南朋の顔が緩んだ気がした。


 孫達と過ごす時間は本当に幸せだ。

 だが、南朋は時々、不安そうな表情をする。


「南朋ちゃん。新しい学校だでぇ、大きなお返事しないと、お友達出来ないでねぇ」

 そんな事を言ってみたのだが、南朋は益々表情が固くなり、あまりしゃべらなくなってしまった。



 ゆめは、これからの孫達との生活の中に嬉しい事ばかりでなく、見守っていかなきゃならない事があるのだと思った。