それから、結奈は運動会の練習に参加するようになった。

 かけっこで一位になった事が結奈の自信になった事は間違いない……

 でも、焦る事は無い少し筒でいいと、優一も南朋も分かっている。



「結奈ちゃん、槙野先生を信頼しつつある見たいだよ」

 優一が、夕食の支度をしている南朋に向かって言った。


「そりゃそうでしょ、あのイケメンの先生なら、私だって学校に楽しく行けたわよ」


 結奈がうっとりと目を細くした。

 すっと優一が南朋の後ろに近づき、お尻をギュッと掴んだ。


「痛い! 子供の気持ちになって言っただけでしょ」

 南朋がお尻を手でさすりながら優一を睨んだ。


 優一は面白くない。

 槙野が言った一言が気に入らないのだ。

 『優一先生の奥さん、綺麗な方ですね…… あんな素敵な方が居るなら僕もHELPに行こうかな?』


 優一はその言葉に、槙野をもの凄く冷ややかな目で睨んだ。


 槙野は何も言わず後ずさりして逃げて行ってしまったが…… 



 『南朋に声を掛けると、優一に殺される』と言う、男性教員達の噂を槙野は赴任したばかりで知らなかったのだ。


 勿論、そんな事など南朋は知らないし、優一も言わない。