父親の運転する車の後部座席に、南朋は弟の翔と乗っていた。

 今日から、新しい家におじいちゃんとおばあちゃんも一緒に住むのだ。

 南朋は確かに、嬉しい気持ちもあったが、不安だらけでお腹が痛かった。

 それは、さっきから助手席で話す、母親の言葉にあった。


「翔は、元気に返事も出来るし、人懐っこいから新しい保育園でも心配しないけど…… 問題は南朋よ…… 下ばっかり向いてて、知らない人からはすぐ逃げるし、お友達出来るのかしら?」


「おい。南朋に聞こえるだろ? 余計不安になるぞ」

 父親がなだめるが、母は南朋の性格にイライラしているのが分かる。

 その上、今日から姑との同居だ、イライラを南朋に向けているのだろう。

 南朋だって、四月から新しい学校への不安でいっぱいなのに……



 車が、トラックの後ろに止まった。


「さあ。着いたぞ!」

 父の声に翔が車から飛び降りた。


「翔ちゃん待って!」

 南朋は車から降りて、慌てて翔を追い掛けた。


 今まで住んでいた社宅とは違う大きな家に、南朋も翔も興奮しいていた。


 先に来ていた、おばあちゃん達は離れの片づけも済み、引っ越しが終わるまで南朋達と遊んでくれた。



「南朋ちゃん。新しい学校だでぇ、大きなお返事しないと、お友達出来ないでねぇ」



 おばあちゃんの言葉に南朋は肯いたが、又お腹が痛くなった。