学校から帰ると南朋の婆ちゃんが来ていた。

 どうも、内職を始めたらしく毎日、二人でゴソゴソやっている。


「南朋が、朝泣きながら学校行くんだわ」

 南朋のばあちゃんの、心配そうな声が聞に足を止めた。


「どうしたかね? さっきもニコニコして帰って来ておったに……」



「学校の先生に聞いてみたらしいんだが、特に心当たり事は無いって言われたもんで……」



「あれ? じゃあ、何があったかね?」


 婆ちゃん達の会話は優一にとって、悔しいだけのものだった。


 田川がそう言えば、大人はみんな信じて言うなりだ……


 田川に対する苛立ちを何処へもぶつける事が出来ずに、公園へと一気に走った。



 南朋の家の前で、南朋が母親と一緒に居る姿を見つけた。


 南朋は笑っている。

 笑っている顔が泣いて見えた。

 違う…… 

 あんなの南朋の笑顔じゃない! 




 優一は、どうする事も出来ない悔しさに苛立ちを抑える事が出来ない。


「お兄ちゃん遊ぼう!」


 翔がニコニコと近づいてきた。


「おねえちゃんは?」


「お勉強だって」


「ふーん」


 優一は面白くなかった。



 バットで素振りを始めた。


 その様子を和希が心配そうに見ていたが、優一は気付かぬふりをしてバットを振り続けた。