ぎゅっと、隣で…… 

「お婆ちゃん達…… 来年は曾婆ちゃんになるよ!」

 一瞬、南朋の言葉が理解できなかったが、次の瞬間、ゆめもサキも飛び上がってしまった。

 この歳になって、こんな嬉しい事に出逢えるなんて奇跡だと神に感謝した。


 恵理さんが、ハンカチを目で押さえてさっていく姿に、ゆめは、南朋と恵理が笑い合う事もそう遠くないと思った。


 そして、ずっと見ていたテレビから驚きのニュースが流れた。


『小学校教諭体罰にて逮捕。田川良子被告』



 あの、田川め! 南朋を苦しめよって、今思い出しても腹が煮えくりかえりそうだ。



 南朋は大丈夫だろうか? 


 不安になって南朋を見ると、南朋のお腹にある手を優一がそっと握りしめていた。


 優一君がおるから、南朋はもう大丈夫だ……


 南朋、良かったね……

 幸せになるんじゃよ……


 
 次から次へと、考えれない恐ろしいニュースが毎日のように飛び交っている。


 何が、子供達を追い詰めてしまっているのだろうか?


 私達に出来る事は、もう、何もない……

 でも、忘れないで欲しい、愛されて産まれてきた事を……

 愛されて育った事を……



 新しい命が誕生する今、ゆめとサキは、その命を見守る事はそれほど長くないと感じていた。

 それでいい……


 
 新しい命を、この笑顔が守り続ける姿が、ゆめとサキには見えた。


 もう少しの時をもらい、新しい命の顔を見届けたら、私達は一足先に旅立ちましょう。


 ゆめとサキは、お互いの顔を見合わせ肯いた……



      ぎゅっと、隣で…… 「完」