演奏が終わり拍手が湧き起こる。
ギターを彼らに返し一礼すると、人だかりを掻き分け彼女は僕の元へ来てくれた。
もう皆が見てるのなんてお構いなし。
強く抱きしめた。
「芹、ごめん……我慢出来なかっ……」
人差し指で言葉を遮られる。
何も言わないでと目で言われた気がした。
揺らいだ瞳からこぼれ落ちた涙。
そしてそのまま彼女から唇を重ねてきた。
「おぉ…」と言う周りの声も気にならないくらい君を感じる。
額をくっつけて彼女は「会えるって信じてた」と言った。
君の歌声が僕を引き寄せたんだ。
「ヒュ〜」との声に2人して我に返る。
ヤバ……恥ずかし過ぎだろコレ。
「もう1曲歌って!」とアンコールされてるし、ギターを貸してくれた彼らも「お願いします」と言ってくれてる。
顔を見合わせて笑った。
やっと会えた事で胸がいっぱいだった僕にはまだやるべき事がある。
「えっと、どうしよう」と戸惑う彼女と期待しまくりの人だかり。
「ちょっと待って」と僕は皆さんにお願いした。

