「はぁっ?誇りとか……力とか馬鹿じゃねぇーの?
何が出来るんだよ……そんな身体で。
ただ周りに馬鹿にされるだけじゃん!!」
障がい者のくせに……世界だなんて
無茶苦茶じゃん。
「確かに……中には、
馬鹿にする奴も居るかも知れない。
走るのが遅いと勝手に決めつけられて。でもな。
俺達は、そんな小さい事は気にしない。
どうしてだと思う?
それは……自分の誇りを忘れていないからだ」
だがおっさんは、クスッと笑いながら
そう言ってきた。
「自分の誇り……?」
「あぁ、前に話したよな?
俺も君みたいに右足を無くして絶望したって。
でも今は……それで良かったと思っている。
無くした分……俺は、それ以上のモノを
手に入れたから」
「何だよ……それって?
身体より大事なモノなんて無いじゃん。
馬鹿じゃねぇーの?」
俺は、呆れたように呟いた。
「あるさ。俺は、それからがむしゃらに努力をして
パラリンピックに出た。そうしたら
たくさんの人に支えてもらったと実感をしたし
何より同じ同志の仲間にも出会えた。
今でも一緒に飲みに行ったり交流を続けている。
それは、右足を失わなかったら
会えなかったかも知れない」
「それだけではない。
そのお陰で彼女、結衣とも付き合えるようになった。
これも俺が義足ではなかったら
ずっとただ怖い上司だと思われていただろうな。
そんな風にたくさんの人に触れあえた。
無くしたと思った。
人生も捨てたものではないと思えた。
これは、俺の何よりの誇りだ」
おっさんは、そう言ってきた。



