そして俺に
「あのね……翼。私、諦めないから。
翼は、迷惑かもしれないけど
私は、まだ可能性が残っている間は、
それを信じたい」
「それに、ずっと
翼の後ろを追いかけて来たんだよ!
これからも私は、追いかけるから。だから
毎日でもお見舞いに来るからね!!」
千花は、そう言ってきた。
「……勝手にしろ」
俺は、布団に潜りながら
そう言ったが、内心驚いていた。
千花……どうして?
後で聞いた話だと
その時……千花は、おっさんに会って
話を聞いたらしい。
そして前の向き方を聞いたとか……。
だが俺は、前の向き方を未だに
分からないまま苛立ちだけを積もらせていた。
苛立ちをただ人や物にぶつけるだけで
そこから一歩も動けなかった。
それから答えが見つからないまま
月日が過ぎて行く。
春から夏になった頃。
あるきっかけが俺の人生を変えようとしていた。



