私の世界に色をつけて

なにも喋らず…歩くこと10分




「横断歩道、ついたけど」



ついたんなら…



「その横断歩道を渡ってすぐ右の脇道に入って、あとはそのまままっすぐ。オレンジの屋根が私の家、前園って書いてるからわかると思う」



目が見えてた昔からずっとこの家だ





「…」


「…」



ねぇお互い喋らないって何笑



「ねぇ」



お、佐野くんが口を開いた



「んー?」



「前園さんは、どうして目が見えないの?」



え、それ聞く?今ここで聞く?



「病気だからだよ」



「目が見えないと、目を開けちゃダメなの?」



なんか質問攻めですな



「ううん、そんなことは無いけど、私が嫌なの」


「なんで?」



まだ聞くか!



「目が見えないから、自分が今どこを見てるかわからないじゃない?それで目が変な方向に向いてると気持ち悪いから。だから目は開けないの」



「ふーん」



おいお前、聞いといて何だそれ



「別に目が変な方向に向いてても、気持ち悪いとは思わないけどね」



「え…?」




「だって、世の中には腐るほどの目が不自由な人がいる。その人達、目、閉じてる?」



「いや、閉じてないけど…」



「でしょ、だから前園さんも目開ければいいのに」



目を開ける……


「俺、前園さんの目、見てみたいけど」




目を開けるなら…義眼をつけた方がいいのかな…



「俺は、前園さん自身の目がみたいの」



え、声に出てた?



「顔に出てる」


え、エスパー!?



「だから顔に出てるんだって」



「あ、そか…」



「ま、明日までにでも考えといてよ。それと、明日7時50分に迎えに来るから」



え、




「迎えに来るの!?」



「うん。当たり前。それと、明日からは車椅子。じゃ、またね」




「え、ちょ…」



足音が遠くなる




行ってしまった…




え、え


どうしろと…!



私はそのまま家に入った