「げ、先輩…」

「げ、っていうなよ。俺も一応傷つく人間だぞ」
いつもより遅めに家を出たはずなのだが、案の定、孝之にばったり会ってしまったのだ。


「あぁ、そうだ香。あのな…」

孝之がなにか言いかけた時、電車が来た。
香と孝之は電車の中を見て真っ青になる。


「混んでる…しかも結構サラリーマン率高い…」

「でも、乗るしかないよな…」


降りてくる人はみんなげっそりしていた。
「(あぁ、ご愁傷さまです…)」

そんなことを思いながら電車に乗り、できるだけ入り口に近くて空いていることろを探そうとする。

その時、ちょうど電車の扉が閉まり、大きく揺れて発車した。


「きゃっ…！」

「っ…！？」
つり革かなにかに掴まろうとするが、近くにない。

ドサッという音と共に、香は扉に体をぶつけてしまう。
それだけで済めばよかったのだが…