「そんなこと言ってないです!」
「いや、言ってるな」
「ち、近いです!」
楽しそうな表情が近い。
私が顔を逸らさなければ、唇が触れてしまいそうで……。
「俺のこと、好きなんでしょ?」
「……」
「違う?」
「……」
「キスするよ?」
しつこい彼に、もう、どうにでもなれという気持ちで、私は叫んだ。
「好きですよ!好きにならないはずないじゃないですか!?」
仕事の合間に、わざわざ好きなチョコをくれて。
ストーカーから守ってくれて。
忙しいのに、私の通勤と帰宅の時間を合わせてくれて。
声が素敵で。話し方もとても上手くて。
紳士で、優しくて。
そんな彼を好きにならないはずないのだ。
「顔、真っ赤」
「今日の元原さん、イジワルです」
「普段は、紳士でも、好きな子はいじめたくなるの」
元原さんは、サラリと言って、身体を翻した。
そして、リレーのバトンを受け取るときのように、私に向かって手を差し出す。
「元原さん……?」
状況が分からず、戸惑う私に、赤い顔の元原さんが、ぶっきらぼうに言った。
「手繋ぐよ。今日から恋を始めるんだから」
〜fin〜
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