私は夢にうなされていた。
二度と思い出したくもないあの日の出来事を。


そして、夢の中で泣いていた。


でも少し違ったのは、誰かが涙を拭ってくれたこと。
支えてくれる誰かが夢の中でいた事。


そして、目を開けると目が少し腫れていて皮膚がつっている。


……そうか。私夢でも現実でも泣いていたんだ。


でも涙の跡はあるけれど、起きたとき涙が少しも頬に流れていなかった。


そして、気付く。
廉の手が私の顔の前にあったこと。


廉が涙を拭ってくれたんだ。



『……起きたか。』


『うん。おはよう。』


『おはよう。』


廉は"怖い夢でもみたんか?"とか
"うなされてたけどどうした?"とか何も言わず、ただ…
ただ、抱きしめてくれた。


そして、頭を撫で撫でしてくれてる。

その優しさに涙が出そうになる。



私はいつまで廉に言わないつもりなんだろう。


……何も話さないで廉はどんな気持ちになっているんだろう。


気持ちの整理がついていなくても、大切にしてくれてる廉には、話さなきゃいけない。


怒って悲しんで泣きじゃくったっていい。
廉に…廉に私の過去話さなきゃ。



『ねぇ、廉。来週…。来週は、私行きたいところがあるの。だから私の地元まで来てほしい。』



『…分かった。行くよ。』


私の真剣な眼差しに廉は気づいたのか何も聞かず、来週来てくれることになった。


お互い洗顔して準備し始め、廉は着替えたら急に立ち上がった。


『俺、ちょっとじぃさんと婆ちゃん所に行ってくんね。』


『ん。分かった。』


廉がお婆ちゃんたちと話してる間に、私は廉が着ていたジャージに袖を通す。



あぁ〜、廉の匂いがする〜。



…って、いやいやいやいや!!
わたし変態じゃん!!


ただ、私が着たらどれくらい大きいのか確かめたかっただけなんだけど…。