あれから、ボクはさとし君たちのことが頭から離れなかった。週末に空き地に行っても、さとし君は全く来なくなってしまって、その理由もわからなかったし、頭からもうすべて忘れてしまいたいようで、何がどうなっているのか真実をつきとめたいという気持ちもあった。

あの夜に公園で見たさとし君の様子は、何度思い返してもやっぱり異常だった。明らかに、誰かと会話をしていた。さとし君には霊感があって、幽霊や悪魔と取り引きでもしていたのだろうか。それとも、双子だから、テレパシーでつよし君とケンカを…いや、まさかそんなはずは…。
凶暴なつよし君の行動も、妙に気になった。物置小屋から抜け出したあと、なぜ放火現場にいたんだろう。どうしても、事件と二人が関係しているような気がしてならなかった。

一度、初めてさとし君を尋ねて家に行ったけど、インターフォンから家政婦だという落ち着いた女性の人の声がして、外出しているから今は留守だと言われた。すごく緊張して頭が真っ白だったから、いなくてボクは内心ほっとした。
「家政婦さんがいるって、やっぱりすごい家族なんだなあ…。」
ボクは心の中で呟きながら、周りを眺めた。さとし君たちの家は、前庭にいろんな花や植物が生えていて、大きくて立派な家だった。ドアの前から引き返すとき、前庭の家から少し離れたところに、小さな小屋があるのが目に入って、一瞬ドキッとした。


季節は真冬になり、雪で町全体が真っ白になった。木々やいろんな生き物が眠りについて静まり返っているような景色と、ひんやりとした空気で、別世界になったようだった。
ボクは時間があれば家に引きこもり、学校の友達と外で遊んでいるとき以外は、インターネット上の友達と一緒にダンジョンをクリアするのが日課になった。
何事もなく時は流れ、雪が溶けて春になり、やがてたんぽぽや菜の花が顔を出して、あたりは緑や黄色に色づいてきた。


暖かな季節を迎えて新学期が始まり、5年生の新しい教室に慣れてきた頃、次の事件は、起きた。
次の事件というより、連続暴行事件といった方がいいのかもしれない。死者は出ていないが、体に重傷を負わせるほどの暴行を繰り返す、正体不明の通り魔だった。