あの夜から、ボクの周りで次々と事件が起こり始めた。

朝、憂鬱な気分で学校へ行くと、教室から妙に騒がしい声が聞こえてきたから急いで入ると、クラスのみんなが怯えた様子で何かをひそひそと話し合っていた。
幼馴染で、サッカーばかりして全身日焼けで黒くって髪が長めの、宿題サボりの常習犯であるかずまに近寄って、何があったのかを聞いた。
かずまは「ヤバい」と青ざめた顔で言った。
「ついさっき、ヤギのエサやり当番の女子が小屋に行ったら、ヤギが血を流して倒れてたらしい。喉に包丁が刺さってて、全く動かないって。今先生たちが、調べてる。発見した女子は、保健室に行った。オレたちは、じっとしてろだってさ。」
ボクは、背筋がゾッとした。
ーいったい誰が、そんなことを?
少し経ってから担任の先生が教室に入ってきて、今日は授業はやらないから、お父さんお母さんに来てもらって帰るか、先生たちと一緒に集団下校するように言った。
ボクの家はお父さんは仕事だしお母さんも夕方までパートだから、ボクは集団下校して帰った。
今日は一日絶対に外を出歩かないようにって先生に言われたけど、昼になって、冷蔵庫にも戸棚にも何も食べるものがないのに気がついて、自分で作れないしお腹が減って限界になったから、勇気を出して近くのコンビニにお弁当を買いに行った。
行くときも、帰りも、大急ぎで走った。ヤギ殺しの犯人におそわれたらどうしようと思って気が気じゃなかったけど、犬に吠えられただけだったから、ほっとした。

次の日から、すぐ学校は再開した。保護者の人たちからたくさん反対があったけど、授業を遅らせるわけにもいかないから、警察やPTA役員が当分の間学校近辺を厳重にパトロールするということで決まったって、お母さんが言ってた。
数日後に警察はいなくなって、2週間後には、登下校の時間帯だけPTAのおじさんおばさんたちが通学路の交差点とかで見張りをするようになった。
現場を発見した女子は、別のクラスの人で、3,4日間学校を休んだけど、また通いはじめたらしい。
元どおりの日常生活が、戻りつつあった。


でも、また事件は起こった。