「おーい、セメント急げ、時間ねえぞ〜!」
遠くから、現場監督の声がした。
俺は、高校を卒業してからずっと17年間、土木工事と建築の仕事をやってきた。現場での経験が長いから、今なら電気設備以外の一切の一連の作業ができる。やろうと思えば素材と機材さえあれば一人で小さい家も建てれられる。
肉体労働は体にこたえるが、図面のとおりに建物が無事完成したときの達成感と喜びはひとしおだ。
真夏の炎天下の中、頭に巻いたタオルをほどいて首回りの汗を拭き取り、また結び直した。その時、こめかみにできた大きな傷跡が手に触れ、俺は、久しぶりに昔のことを思い出した。生涯忘れることのない出来事だ。
当時俺は、小学生だった。