ベッドから起き上がって玄関まで行くと、スーパーの袋をぶら下げている秋庭さん。




「おはよう美紅。二日酔いは大丈夫か?」




そう言ってスーパーの袋から水を取り出して渡してくれた。




ホントに申し訳ないし…、やっぱり私に甘すぎる…。





「寝てる美紅のことを俺の家に連れ込むわけにもいかないから、合鍵使わせてもらったぞ」





「秋庭さん…ホント、いろいろとすいませんでした…」





「んー…。可愛かったからいいよ」





優しく笑ってから私の頭を撫でた秋庭さん。




記憶がないので、どんな醜態を晒してしまったのか不安でしょうがない。





「あっ、真希たちが秋庭さんにお礼言ってましたよ。なんかあったんですか?」





「いや、なんもない。俺は昨日、美紅のこと迎えに行っただけだからな」





いや…絶対、嘘だ…。




何もなかったら真希があんなに興奮するわけない。







「それより美紅…。一緒に住まないか?」





「え?」





「ん?」





「は?」





「ん?」





秋庭さんが唐突に発した言葉の意味が理解できずに思わず何度も聞き返してしまった。





「美紅と少しでも長く一緒に居たい。俺の我儘だってのは分かってるが…一緒に住みませんか?」





告白してくれた時もそうだったけど、秋庭さんって真面目な話をするときは敬語になるんだなぁ…。




いや、そうじゃなくて!




一緒に住む…?秋庭さんと…?




考えるだけで顔が赤くなった。





でも…



「はい…よろしくお願いします!」




少しでも長く一緒に居たいのは私も同じだ。




秋庭さんの我儘なんかじゃない。






「よし、そうと決まれば引っ越しだ。明日には引っ越すから今から荷物まとめるぞ」





「え、ちょっと!」





「あ、それと美紅。俺の下の名前知ってるか?」





「え、いきなりどうしたんですか…?」





「俺の下の名前、知ってるか?」





「弘…翔さんですよね?」





「お、そうそう。じゃあ今からそれでいこう」





「え!?秋庭さん!?」





「弘翔だ」





「弘さん?」





「なんでだよ!」





「みんなそうやって呼んでるじゃないですか!」





「他の奴らと一緒でいいわけあるか。好きな女にはちゃんと名前で呼ばれたい」





「弘翔…さん?」





「‘さん’はいらないな」





「…………弘翔」






そう声に出してみると、秋庭さん…いや、弘翔が今まで見たことないくらい嬉しそうに笑った。




そんな顔されちゃったら…もう秋庭さんとは呼べないなぁ…。






ちなみに、何故か敬語もやめさせられた…。





「高巳には呼び捨てタメ口だろ。
俺、意外と嫉妬深いんだよ。悪いな」





そういう弘翔は少し子供っぽくて、可愛かった…。