秋庭さんは二人がやり取りしている間に4人分のコーヒーを淹れてくれていた。




というか…この中で一番立場が高いであろう秋庭さんがこんな雑用みたいなことするんだ…。






───コーヒーをそれぞれ飲んで一息ついたところでおもむろに秋庭さんが口を開いた。





「俺が極道であることは説明した。その上で…付き合うことになった。お前達には色々と手を貸してもらうことになると思うが…頼むぞ」






「へーい」




「おめでとうございやす、弘さん」






軽い返事をしたイケメンさんは真面目な顔で私を見た。





その目はさっきまでとは違って…私の真意を探るような…。







「ま、覚悟してこの世界に来るなら俺は止めないよ。俺は弘の側近として自分の仕事をするだけだからね。
俺の守らなきゃいけないものの中に君も入っただけだ」





先程までよりもワントーン低い声。




仕事をする男の声だ。








「俺は山門高巳(やまとたかみ)っていいます。秋庭組幹部で若頭付き側近やってるので、美紅ちゃんとは関わることがかなり多いかな。よろしくね」






「よろしくお願いします…!」






「年は弘の3つ上だけど、呼び捨てにタメ口で全然いいから」






秋庭さんの3つ上か…ん?秋庭さんって何歳だ…?





チラリと秋庭さんを見ると『俺は今年で26だ』と教えてくれた。




意外と若い…。






というか…イケメンさんこと高巳さんは本当に29歳なのだろうか。





信じられないくらい若く見えるし、秋庭さんとは違ったタイプではあるけど、かなりの男前だ…。







「何か質問とかある?」





「いや…大丈夫です。あの高巳さん…なんで私の名前…?」






「だから高巳でいいって。それにタメ口で。若頭の女が俺なんかに敬語使ってたら他に示しがつかないからね」






そう言われてしまったら敬語を使うわけにもいかない。





仕方なくではあるけど、高巳って呼ばせてもらうことになった。






私の質問に高巳は





「職業柄ね。申し訳ないけど、美紅ちゃんの周辺は少々調べさせてもらったよ。俺にとっては弘の安全が第一だったから。ごめんね」





と、申し訳なさそうな顔で返された。