私の言葉を遮った秋庭さん。
その声があまりにも真剣で、ゆっくりと顔を上げると、射貫くような真剣な目をした秋庭さんがいた。
「美紅の言葉を聞く前に伝えなきゃいけないことがある。
まだ間に合う。美紅には選択肢がある。俺みたいなろくでもない男に捕まっちまう前に逃げてくれて構わない。それでも俺には…たとえ美紅に嫌われることになってでも、言わなきゃいけないことがあるんだ」
「……………」
少しだけ、秋庭さんの瞳が揺れた。
覚悟の色と不安の色が混じり合う。
「極道なんだ」
「……え…っ……?」
「秋庭組六代目若頭を襲名してる。いずれ組を継ぐことになる」
「……………。」
「今の時代、極道、暴力団、任侠と言っても一括りにヤクザと呼ばれる。言いたいことはたくさんあるが、真っ当に生きてる人間からしてみたら裏で生きてる人間に違いはない」
「……………。」
「汚いことも、言えないようなことも…たくさんしてる。一般人と極道なんて普通に生きてれば絶対に交わらない。何度も交わらなければよかったって、何度も忘れなきゃいけないって思った」
「……………。」
「それでも…会う度に、美紅の涙を見る度に、自分の想いに嘘が吐けなくなった。俺が一人の女にこんな気持ちを抱くなんて思ってなかったよ。こんな世界見せちゃいけないのも、こんな世界に巻き込んじゃいけないのもわかってる。
だがな…一人の男として言わせてくれ」
