「お前…全ての片が付いたらどうするつもりや?」





「どういう意味でしょうか?」





「だから...誤魔化すな」





「…………。」






「弘にあっさり若頭を譲った時から思っとったが…お前、秋庭にはなんの思い入れも通す義理もないんやろ」





「…………。」






「お前が示した道の先で弘が幸せになったその時、お前はなんの為に生きるつもりや」





「…………。」






「また腑抜けた廃人にでも戻るつもりか?って聞いとんのや!」





「…………。」





「…………。」





「…………。」






「…すまん、言い過ぎた」





「私は君のそういうところ好きですよ」





「そりゃどうも」





「……………。」





「なぁ蓮。何度も何度も言うとるが、僕が信用してるのは秋庭でも春名でもなくお前だけやぞ。三季会の話も東との同盟の話も、全部お前を信頼してたから納得したんや。わかっとるよな」





「君は昔から私を買いかぶり過ぎですよ」





「僕は蓮以上の男を後にも先にも知らんからな」






「…………。」





「弘のためにお前が死ぬのは許せる。だが、秋庭にお前が飼い殺されるのは認めへんぞ」





「君にそこまで言ってもらえるとは、親友冥利に尽きますね」





「茶化すなや。怒るで」





「もう怒っているでしょう」





「…………。」




「…………。」






「秋庭のおっさん連中の何倍も、僕は芹沢蓮の価値をわかっとる」





「君が言いたいことはちゃんと理解しているつもりですよ」





「なら話は早いな、西に来い。
柊の好きな席を用意しといたる」





「…総長がいいですね私は」





「試しても意味ないで。何度も言うとるやろ、蓮の下につくなら構わへん」





「冗談ですよ。自分の身の振り方は自分で考えます」





「おい...蓮」





「これでも...君にそこまで言ってもらえて素直に嬉しいんですよ」





「それなら...」





「ですが、やはり自分の生きる道は自分で決めます。どうするかはゆっくり考えますよ」





「…………。」




「…………。」





「まぁ…金は腐るほど持っとるしな蓮は」





「そうですね」





「ちょっとは否定せえよ…」





「…………。」




「…………。」





「来年の2月と3月、またしばらく日本を離れようと思っています」





「またかい。相変わらず独特な勤務体系やな」





「君の手を煩わせるなら、おそらくその期間になるでしょう。先に謝っておきます」





「改まってやめてくれや。キモいで」





「失礼ですね君は」





「今さら頭下げ合うような関係やないやろって意味や」





「それもそうでしたね」





「…………。」




「…………。」






「なぁ蓮、僕たちが出会って間もない頃にお前が僕に言ったこと、覚えとるか?」





「…ええ、もちろん」





「今でも…あの時お前が言ったように…僕の性格は蓮の親父さんに似てるか?」





「……………。」




「……………。」




「……………。」




「……………。」






それを言わせますか...私に。







「豪快で大胆不敵、情に篤くて漢臭い。
自分以外の大切な物の為に全てを掛けられる男」





「...............。」






「私が今でも追い続けているあの背中に、君はよく似ていますよ。出会った時と変わらずにね」







「光栄やな」






「……………。」




「……………。」






「では、そろそろ出ましょうか。
明日の昼には京都に戻るんでしょう」





「せやな。ゴチになるで蓮ちゃん」





「…本当、いい性格してますね君は」





「嫌いじゃないやろ?」





「さぁ?どうでしょうか」











──「あぁ…そうでした。稜真」





「ん?」





「一つだけ、訂正があります」





「なんのことや」





「私はあの時から、たしかに弘翔の為だけに生きています」





「知っとるよ。だから、弘がこの世界からいなくなったその時、秋庭にいる意味があるのかって聞いたんやろ」





「秋庭には思い入れも、通す義理もないと言ったでしょう」





「あぁ」






「弘翔と比べれば取るに足らないものではありますが…」






「…………」








「父が命を()して守った組です」





だから





「私が秋庭の為に生きる理由なんて、それだけで十分でしょう」






『今でも父は、私の誇りですから』







「……そうやな」