「あれ、美紅ちゃん、おでこどうしたの?」
その日もいつも通りにバイトに出れば、店長に心配された。
「いやー階段で転んじゃって!」
「女の子なんだから気を付けなよー」
「はーい」
そんな他愛もない会話をしながらバイトはいつも通りに終わった。
おでこの傷…跡に残らなければいいなぁ…
──いつものようにバイト帰りに公園によると秋庭さんがいた。
後ろ姿も相変わらずかっこいい。
今日も缶ビールを傾けている秋庭さん。
「こんばんは…」
そう声をかけると、‘おー’と呟いた秋庭さんと目が合った。
そして…秋庭さんの顔色が一瞬で変わった。
「おい…額、どうした?」
驚いたような、悲しそうな顔をする秋庭さん。
そんな顔しないで欲しい…
秋庭さんのそんな顔は見たくなかった。
「階段で転んじゃって…」
そう言うと秋庭さんは今までで一番怒った表情を浮かべた。
そして、低い甘い声で…
「……彼氏、か?」
そう言った。
