そしてあっという間に来てしまった会合の日。


緊張して昨日はよく眠れなかった。




純さんが運転してくれている車内、高巳も弘翔もいつも通りだけど私は緊張でガチガチだ。粗相がないように気を付けないと…!



ちなみに、今日は私も弘翔も和装。


公式な会合の場では弘翔はいつも和服らしく、私の着物もいつの間にか用意してくれていた。聖弥さんに頼ったわけではなく、秋庭家お抱えの呉服屋で見繕ったらしい。


浴衣以外では初の着物だし、それが彼氏からのプレゼントときたらこれ以上嬉しいものはない。


弘翔の濃紺の着物に合わせたらしい藤色の落ち着いた柄の着物。


私に似合うかわからず不安だったけど『よく似合ってる』と笑ってくれた弘翔の言葉を信じることにしよう。






「気を付けなよ、美紅ちゃん」



助手席から高巳に声を掛けられるも、言ってる意味がよくわからず首を傾げる。



『おい高巳』と純さんの低い声が制すも、車内には何となく重い空気が…。


やっぱり一般人の私が極道の会合なんて場違いだったのかな…




「はっきり言っといた方が良いでしょ弘」




「黙っとけ高巳!」




「純さん前!前!」




「美紅さん、この馬鹿の言葉は気にすることありやせんから」




「いやいや純さん、弘。ちゃんと言って警戒させといた方が良いと思うけどね俺は」




さっきから高巳の言いたいことがよくわからない。


弘翔も横で難しい顔を浮かべて何も言わないし…。



一体何なんだろうか。




「まぁそうだよな弘、『俺めっちゃモテるから気を付けろ』なんて自分じゃ言えないよな~」




「高巳!」




今度は純さんではなく弘翔の焦った声。



「事実だろー」




「高巳、どういう意味??」



思わず私から聞いてしまった。



『おい…美紅…』と横から弘翔に言われるも無視。



「今日来るのは同盟や傘下の組の幹部や組長クラスの連中なんだよ」




「うん、弘翔から聞いた」




「で、弘が美紅ちゃんを連れていくように、聖弥さんが楓さんを連れていくように、組長共は自分の嫁や娘を連れて来るってわけ」




あぁ…何となく、高巳の言わんとしていることがわかってしまった。


隣で弘翔がバツの悪そうな顔をしている理由も。




「若干26歳で秋庭組若頭、この世界に入ってから一切の浮ついた話無し。加えて高身長イケメンときたら…ハイエナのような女の子たちに狙われまくってるってこと」




サラリと、爆笑しながら言い放った。