本部のテントを出て、うろ覚えの道を辿る。
慣れない下駄は歩きにくいし、鼻緒の所が擦れてかなり痛い…。
絆創膏持ってくればよかったな。
オシャレって大変なんだな…としみじみと実感。
結婚…か。
お祭りの前に遥輝さんと話したことが頭に浮かぶ。
高巳のこととか夏樹さんのことを気にしている場合ではない。そんなことは私もよく分かっている。
問題を先送りにしていては、このままの幸せが続くなんてことはあり得ないのだから。
だけど弘翔に改まって聞くのが怖い。
私の卒業後、弘翔はどうするつもりなんだろうか。
私は関西に戻るべきなのか。
就活は?短大生なのでもう今年度で卒業だ。夏休みから本格的に秋就活をしなければいけない。
関西の地元で就職?
それとも東京で就職?
弘翔と話をしなければいけないことが多すぎて、だけど聞くのが怖くて、宙ぶらりんのまま過ごしてきた。
もし、もしも、結婚だとか東京に残るとかになった時、弘翔は父に職業をなんというのだろう。
隠すのかな。
いや、隠すような人じゃないのは私が一番よく分かっている。
「……弘翔はどうするつもりなんだろう」
私の情けない呟きだけが雑踏の中に消えた。
こんな日に気落ちするようなことを考えるのはやめた方が良いというのは分かってるんだけど…。
遥輝さんの言葉が頭から離れない。
『君に好きだと伝えた時、弘は覚悟を決めてたと思うよ』
遥輝さんは確かにこう言った。
詳しいことは何も教えてくれなかったけど。
弘翔が何を考えているのかは分からないけど…別れるなんてことにはならないよね…?
だけど…弘翔が何を言ってもお父さんが許してくれなかったら…?
嫌な想像だけが頭の中を駆け巡る。
でも、お父さんは弘翔のことかなり気に入ってたし…。無理やり別れさせるとか、ないよね?
だめだ。
今はこんなこと考えるのやめよう。
切りかえようにも切り替えられず、一人でうだうだと考えながら歩いていればいつの間にか手洗い場に着いていた。
少し並んでいたが私は手を洗うだけなので、手を洗ってさっさとその場をあとにした。
