──相変わらず余裕綽々で甘い事しか言わない弘翔に翻弄されつつ、お祭り会場までは二人で歩くことにした。
デートの時に並んで歩くのも手を繋ぐのにも慣れてはいるけど今日は…
「…なんで弘翔まで浴衣なの…!?」
ただでさえ人目を引く容姿の彼氏様がいつもの何倍も男前に見える。
自分の彼氏の容姿をべた褒めするのは反感買って刺されそうだけど、私の隣を楽しそうに歩いている人は…控えめに言っても鼻血が出そうなくらい浴衣が似合っていて男前だ。
「んー?変か?」
殺傷能力満載の笑顔と共にこっちを見ないでほしい。
本当に鼻血出そう。
「美紅がせっかく浴衣着てくれるなら俺も着ようと思ってな。聖弥さんがくれた」
私の浴衣もそうだけど、春名夫婦はセンスが良いらしい。
濃紺で無地の浴衣に白地の線が入った帯。シンプルで飾り気のない浴衣だけど、弘翔によく似合っている。
「おいおい、照れるからそんなに見ないでくれよ。変か?」
「……似合ってます」
「そうか、良かった」
だから、そんなに嬉しそうに笑わないでほしい。
イケメンに浴衣って破壊力が強すぎてこっちの身がもたない。
せっかく私も浴衣を着て少しはマシになったのに弘翔がこれじゃますます釣り合わなくなってしまう。
手を繋いで歩いているだけで周りからの視線が凄いし。
「俺としてはこのまま帰りたいくらいなんだけどな」
「えっ?なんでよ」
「言ったろ。嫉妬深いんだよ俺は」
「…嫉妬する要素あった?」
「大アリだ」
「大アリなの…?」
「あぁ」
弘翔は意味深に笑うだけでちゃんと教えてはくれない。一体全体なんなんだ…。
今にも逆ナンされそうな彼氏に私の方がやきもきしているというのに。
その後、弘翔と他愛もない話をしながら会場へと向かった。
──「お祭りって久しぶり!」
無事に着いたけど、思っていてよりも大規模なお祭りだ。
勝手にこじんまりとしたお祭りを想像していたんだけど、神社を中心に参道にもたくさんの屋台が出ていて大賑わいだ。
「さて、何から行く?」
「弘翔は焼きそば一択とか言ってなかったっけ??」
「よく覚えてるな」
