こいつらが何者なのかは本当に知らないし興味もない。
俺の女に触れた罪は大きいが、美紅の不安そうな顔に免じてこの場を収めてやっても構わない。
むしろ騒ぎになる方が面倒なので早くこの場から立ち去りたいというのが本音だ。
「あんま調子に乗んなよ!テメーこの辺りが誰のシマかわかってんのか!?」
「……秋庭のだろう」
苦笑しながら返せば、耐え切れなかったらしく美紅が吹き出した。
釣られて笑ってしまったのは仕方ないと思う。
「俺たちのバックには秋庭組の傘下である山下組が付いてるんだ!言ってる意味わかるよなおっさん!」
だから、俺はおっさんじゃない。
そして美紅…俺の後ろで爆笑するな。
彼らには彼らなりのプライドがあるんだろ。
馬鹿にしたら可哀想だ。
「族の仲間呼んできてもいいんだぜ?」
「調子乗ってんじゃねーぞ!!」
「その女だけ置いて早く消えろや!」
なるほど。
この辺りで幅を利かせている暴走族の一員かこいつら。
秋庭を知っていながら俺のことを知らないとは…片腹痛い。
まぁ、この辺りの小物を相手にしているほど秋庭組若頭の職は暇じゃないので、俺の顔を知らなくても当然といえば当然か。
「やめておけ。手荒なことをする気はないし、せっかくの祭りだ。俺は今から彼女とデートをするから君たちに構っている暇はない」
言い終わったと同時に
「ッッ、」
顔めがけて空き缶が飛んできた。
手で払いのけたので問題はないが…おいおい、美紅に当たってたらどうするつもりだ糞餓鬼共。
「いい加減にしろよおっさん!痛い目見なきゃわからねーみたいだな!!」
