いやいやいや、見惚れている場合じゃない!
美紅…なんで15分前なんかにいるんだよ…。
急いで公園の方へと足を向ければ案の定、ガラの悪い三人組に絡まれているのが視界に映る。
いかにもって感じの男共に思わず舌打ちが零れる。
「誰の許可を得て俺の美紅に触れていやがる…」
三人組の一人が美紅の腕をとったのが見え、自分でも驚くぐらい低い声が出た。
─「おっと、大声出すなよ…殺すぞ」
「……誰が誰を殺すって?」
「ッッ!!」
公園に入るなり聞こえてきた言葉に、考えるよりも先に手が出ていた。
真横に吹っ飛んだ男に一瞥くれてやる時間すら惜しい。
「弘翔!!」
「遅くなってすまない美紅」
俺を認識するなり瞳から涙を落とした美紅の肩を抱き寄せる。
「何もされてないか?」
「うん…」
美紅の声が少しだけ震えているのに気付き、舌打ちが出る。
クソ…もう少し早く仕事を切り上げるべきだったな。
「ッてー…。いきなり何しやがる!!」
先ほど殴り飛ばした男がいきり立ちながら俺の胸倉を掴む。
ほぉ、久方ぶりに胸倉を掴まれた。
その度胸だけは褒めてやる。
胸倉を掴んでいる男の方が俺よりだいぶ身長が低いというのは笑止千万だが…。
「弘翔!」
「心配するな美紅。問題ないよ」
「でも…」
不安そうな表情を向けてくる美紅に軽く笑いかける。
そんな顔してくれるな。
こんなガキ共、どうとでもできる。
強いて心配する点を挙げるとすれば…せっかく着付けた浴衣が乱れるから、人の胸倉を掴むのをやめてほしいってことぐらいだ。
大事にしたいわけではないし、早く美紅と二人きりになりたいのでこの場は穏便に収めてやってもいい。
だが…
「おいおいおっさん、ヒーロー登場ってか?彼女の前でカッコつけてると痛い目見るぜ」
どうやらこの若者たちは穏便に済ませてくれる気がないらしい。
そして俺は断じておっさんではない。
26歳のお兄さんだ。
とりあえず、俺の胸倉を掴んでいる男の腕を捻り上げ、丁重に離していただいた。
「あんた、俺たちが誰だか知ってんのかよ?その男前な面を台無しにされたくなかったらその女置いて消えろや!」
「君たちが誰なのかは存じ上げていないが…
やめておけ、無知は身を滅ぼすことになるぞ」
「あ?」
