大切なものを選ぶこと



─弘翔side─




─「じゃあ来週の会合はこの通りで頼む」





「了解。昌之と蓮さんに伝えておくよ」





「頼んだ。誠さん、俺はもう出るがあとは任せて大丈夫か?」





「ん、問題ない。美紅ちゃんとのデート楽しんで」




以前から美紅と約束をしていた夏祭り当日、確認しなければならない仕事があり事務所に顔を出していた。



美紅の浴衣やその他もろもろは何故か楓と桜が喜んで引き受けてくれた。



しかもそれぞれの旦那を巻き込んで…。



遥輝さんも聖弥さんも嫁に甘すぎる…。特に聖弥さん。




17時に本家近くの駅前に待ち合わせの予定だが…。思ったより仕事が長引いたな。



着くのは待ち合わせの10分前くらいになってしまいそうだ。





「弘、今から祭り?」




「あぁ。お前も切りの良いところで仕事終わらせて顔出せよ」




「へいへい。ま、若い奴らが頑張ってるのでも拝みに行くかな」




そういえば…すっかり忘れていたが、葵に今日の高巳の仕事をなくすように頼まれていたような…。



まぁどっちみち高巳は立場上嫌でも祭りに顔を出さなければいけないので結果オーライか。




「和服はともかく弘が浴衣って珍しいね」




「聖弥さんから送られてきた。着ないと美紅を春名で軟禁するって楓に脅されてな」




「ハハッ、なんだそりゃ。ま、美紅ちゃんが浴衣なのにお前がスーツや洋服ってのは野暮だもんな」




「着物は嫌いじゃないし慣れているから別にいいんだけどな」




「早く行ってやりなよ。本家の辺りで美紅ちゃん待たせるのはまずいでしょ」




「あぁ…。確実にナンパされる」




「しかも美紅ちゃんて自分の容姿については無自覚だからね」




爆笑し始めた高巳を横目に事務所をあとにする。




高巳の言う通り、美紅は自分の容姿がどれだけ男の目を引くのか全く分かってない。



なんで俺が毎回30分以上前に待ち合わせの場所に行くようにしていたのか、なんで俺が大学まで迎えに行くのか。



まぁ、そういう事だ。




やっと手に入れた大事な彼女だ。
正直、俺以外の男の視界に美紅が入るのですら不快で仕方ない。




ましてナンパなんかする輩がいようものなら…想像しただけで腸が煮えくり返る。