「浴衣も髪も似合ってるよ。やっぱ元がいいとやりがいがあるね」





「褒め上手ですね…」





「いやいやホント。凄い可愛いよ美紅ちゃん」





「あ、ありがとうございます…」





サラッとそういう事を言わないでほしい…。思わず顔が赤くなってしまった。



『これで弘も悩殺だな』と遥輝さんが楽しそうに呟いたような…。





「にしても、流石だなー」





「え?」





「帯の結び方。俺の店でも浴衣とか成人式の着付けやってるけど、俺この結び方できないなぁ。片花文庫…いや花結びかな…?」







──「そうでしょそうでしょ、さすが私の聖ちゃん!」




またしても襖を勢いよく開けて入って来た楓さん。相変わらずのハイテンション。



そのテンションのまま私を見るなり…なぜか破顔した。





「可愛い!」





「あ、ありがとうございます」





「やっぱ遥輝君は天才ねー。私じゃ一生かかってもこんなヘアアレンジできないわ」





「褒めても何も出ませんよ。一応これで食ってますからこれくらいはね」





サラッと言ってるけど、やっぱりプロなんだってしみじみと実感する。



多分、私の行きつけの美容室でもこんな可愛くて手の込んだアレンジはしてもらえない。




この腕とこの顔面偏差値と明るくて話しやすい雰囲気…予約が殺到するのも納得だ。





「あの…楓さん。こんな高価な浴衣貰っていいんですか?」





「もちろん。この柄は私が選んだのよ、美紅ちゃんによく似合ってる」





「いや…そういう問題じゃなくて…」





「受け取って。弘にも蓮さんにも駿の誕生日とかお祝いたくさん貰ってるのにちゃんと何か返せたことないからさ」





「俺が来たのもそういうわけ。弘も蓮さんも毎年律儀にチビ達に誕生日プレゼント送ってくれるんだけど、弘がちゃんと喜ぶものを返せたことないからね」





好きな女の子の浴衣姿を見て喜ばない男はいないからさ。