大切なものを選ぶこと




自分の好きを人を顔で選んだわけでも、人を見た目で判断しているわけでもないけど、この人は別格というか…住む世界が違う気がする。




それくらい、整った容姿をしている。




男の人に美人というのはおかしいかもしれないけど…どちらかと言えば中性的な…だけど決して女性っぽいわけではない。美形だ。




私の拙い語彙力ではこの人のカッコよさを表せない。




男前とかイケメンという形容詞がピッタリの弘翔とは真逆…眉目秀麗でハンサム。




一見しただけでは外人さんかと思ってしまうくらい端正な顔立ちをしている。




多分、街を歩いていれば誰もが目で追ってしまう。人を魅了するオーラと色気。




腰の位置が物凄く高いので足が恐ろしく長い…その辺のモデルさんよりスタイル抜群だ。




身長自体は弘翔よりも少し低いくらいなので180㎝くらい。十分大きい。




髪は色素が薄い黒で、今日は弘翔のYシャツではなく黒のYシャツに黒のスーツを合わせていて、控えめに言っても大人の色気が半端ない。




この人…何歳なんだろう。









「美紅」





弘翔に名前を呼ばれてハッと我に返る。



初めて…人に見惚れてしまった。




別に惚れたとか一目惚れとかそういうわけでは全くない。ただ単純に”この人”に魅せられた。






「蓮さんに会った人って最初はみんなそういう反応するよね~」





「いつも言ってんだろ兄貴…無駄な色気を振りまくなよ」






お兄さんは弘翔の言葉に少しだけ口角を上げて、ソファーではなくテーブルの所にあるイスに腰を下ろした。




そして、自分のコーヒーに口をつける。





やっぱりこの人…一つ一つの所作が洗練されていて美しい。ずっと見ていても飽きないような…綺麗な所作。




何なんだろうこの人…芸術品のような容姿に芸術のような所作、変な感覚に陥ってしまう。






一旦、心を落ち着かせるためにお兄さんの淹れてくれたコーヒーに口をつける。





「美味しい…」




いつも使ってる豆のはずなにに…香りも味も全然違う。




高級なカフェで出るような…





「あ~やっぱり蓮さんの淹れたコーヒー最高!私のはちゃんとカフェオレにしてくれてるし~」





同じようにコーヒーを飲んだ葵ちゃんはお兄さんに対してグッと親指を立てているし、弘翔はなぜか自分の事のようにドヤ顔だ。






「あの…これって、キッチンにあった豆ですよね?」





「ええ、そうですよ」





小さく頷いてから足を組んでコーヒーを煽るその姿はやっぱり美しい。




人の仕草や所作を美しいと思ったのは初めてだ…