大切なものを選ぶこと




「美紅!違う誤解だ!」





冷たい視線に射貫かれて立ち尽くしている間に弘翔に抱きすくめられる。




一瞬、抵抗しようとししたけど…いつもの何倍もの強さで抱きしめられてしまい身動きがとれない。






「悪かった、不安にさせたな。妹だよ。やましい事は何もない」





「……妹…さん…?」





「あぁ。言ったろ、浮気なんか論外だって」





「…………」





「でもごめんな。不安にさせたな」






弘翔の言葉に全身の力が抜けた。




妹さんかぁ…




私が勝手に勘違いして怒ったのに何で弘翔が謝るのか…。




声には出さず弘翔の腕の中から弘翔を見つめると、これでもかというくらい甘い笑顔を返された。






「弘兄~ちゃんと誤解だってわかってもらえた~?」





若くて可愛い声と共に先程まで弘翔の膝に縋って泣きそうな表情をしていた女性がリビングから出てきた。





抱きしめられていた腕の拘束も解ける。






「あ、ヤッポー蓮さん!!」





妹さんのその言葉で思い出した。





今…目の前にいる人って…







「兄貴!」





「ただいま戻りました、弘翔」






噂のお兄さんだ。




この前会った時とは全然違う。
別人のような雰囲気。




それに…お兄さんを認識した弘翔がとてつもなく嬉しそうな顔をするから、少しだけ胸が痛んだ。





「とりあえずリビングで話さない?弘兄の彼女さんもごめんなさい!勘違いさせちゃいましたよね…」





「い、いえ…。私が勝手に誤解してしまっただけなので…」







弘翔の妹さんはやっぱり可愛い。



桜さんと楓さんに会ったから薄々察してはいたけど、想像よりも可愛い。




物凄い小顔で、桜さんの可愛さと楓さんの美しさを絶妙に足して2で割った感じ。語彙力…。




秋庭家の遺伝子恐るべし…。




私より年下に見えるけど、高校生だろうか?







「蓮さーん、いつ帰って来たんですか?」





「二週間程前に帰国致しました」





「なんだもっと早く会いたかったのにー!」





「仕事が立て込んでおりまして」





「相変わらずですね…」







妹さんとお兄さんの会話を聞きながら4人でリビングに向かった。